2DアクションがやりたくてSteamウィンターセールで購入した『The Vagrant』を3日ほどかけてクリアした。クリアといっても、早期アクセス作品なのでストーリーは完結していない。
現時点でプレイ可能な範囲を終えるまでにかかった時間は、約9時間だ。そのうち2時間ほどは同じ作業を繰り返して稼いでいた時間である。
The Vagrant
Steamのストアページでは、レビューの88%がおすすめと高い評価を獲得しているThe Vagrant。確かに、通常価格でワンコインとは思えない完成度だ。
進行不能になるようなバグに遭遇することはなかったし、グラフィックも日本人にとって受け入れやすいタイプだ。一枚絵には海外のインディーゲームらしさを感じるが、クオリティは高い。
しかし、ゲームバランスに関しては大幅な調整が必要だと感じた。アクションゲームとしては致命的なことに、動かしていて気持ち良くないのだ。
おすすめポイント
序盤は楽しめる
おそらく、プレイ開始から4時間程度は楽しめるだろう。バランスの崩壊はまだ起きておらず、きちんと敵の攻撃に対処しながら進めればドロップする装備・消耗品だけで十分戦えるはずだ。
最初の部分だけを遊んで残りは正式なリリースを待つというのも良い選択だ。セール時には200円台まで価格が下がるため、最序盤だけでも元は取れるだろう。
そこそこ親切なマップ
一部隠しエリアは発見するまでマップに記載されないが、一度行った場所は自動的にマップに書き込まれる。現在地やストーリーを進めるための目的地もマップ上に示されるので、迷うことは少ないだろう。
石碑型のセーブポイント間を結ぶファストトラベルをマップから利用できればさらに便利だった。ワープ先を地名でしか見られないため、たまに間違えてしまうことがある。
様々な攻撃技
プレイヤーキャラクターのヴィヴィアンに可能な攻撃は、「通常攻撃」「強攻撃」「スキル(ゲージ消費技)」の三種類だ。アビリティで新しい技を覚えると、通常攻撃と強攻撃の組み合わせによって出せるコンボのパターンが増加する。
スキルは最大4つを同時に装備できる。こちらは宝箱などから入手できるアイテムで数が増えていく。
3属性の武器
武器には火、氷、雷の3つの属性と無属性がある。武器本体の攻撃力が高めなのは無属性だが、無属性以外の各属性には追加効果がある。
- 火
攻撃した相手を燃やしてダメージを与える。 - 氷
攻撃した相手の動作を遅くする。 - 雷
攻撃した相手から近くにいる相手に雷が飛び移り、ダメージを与える。
使い比べてみた範囲では、特に耐性や相性などはなさそうだ。敵の数が多いゲームなので、雷属性の武器が使いやすく感じた。
ルーンによる武器のカスタマイズ
The Vagrantの武器には最大4つのスロットがあり、各スロットに1つずつルーンストーンをはめ込むことができる。ルーンによって、攻撃力アップやHPアップなどの補正が付与される。
スロット数は武器を強化することで増えるため、トレハンしなくても好きな武器を強化して使える。
おすすめできないポイント
早期アクセス作品なので今後解消される可能性は高いが、気になった点は多い。基本が良くできているだけに、バランスの悪さが目立ってしまっていた。
コンボが不遇
アビリティを取得するには、敵やオブジェクトを破壊して得られるマナが必要だ。このマナはステータスアップ系のアビリティの取得や武具の強化時にも消費するため、新しいコンボ技の取得はそれらとのトレードオフになる。
しかし、せっかくのコンボが役に立たない敵やシーンが多い。多くの敵は打ち上げに対する耐性があるため、空中コンボをするのは難しい。また、後半は敵が多すぎてタメの長い攻撃を出す前に潰されてしまう。
結局、通常攻撃の連打が一番効果的だった。
お手玉される
敵はダメージを受けながらでも攻撃してくるが、プレイヤー側がダメージを受けるとすぐに行動を止められてしまう。そのまま倒れた場合は起き上がりに無敵時間があるが、吹っ飛んでいる途中に他の敵の攻撃を受けることも多い。
雪のエリアで出てくる敵は床にダメージエリアを設置するため、トラップからトラップへと連続して飛ばされることもある。
空中に浮かぶ敵が降りてこない
地面を歩く敵だけでなく、空中に浮かぶ敵も登場する。ヴィヴィアンの攻撃で上方向に判定の強いものはほとんどないため、相手をするのが難しい。
浮遊する敵はプレイヤーよりも上に行きたがるため、ジャンプするとさらに上に逃げていく。画面外の高いところから降りてくるのを待って倒さないと先に進めない…ということもあった。
プレイヤーにだけ牙をむくトラップ
溶岩に敵を落として即死させたり、爆発物を撃って敵を巻き込んだりといった地形を使った戦いができるゲームは楽しい。だが、The Vagrantのトラップはプレイヤーに対してしか機能しない。
破壊すると毒物を撒き散らす樽や床から飛び出す槍など、ほとんど敵キャラクターである。狭い戦闘エリアに設置されていることも多く、近づかずに戦うのも難しい。
また、敵同士にも当たり判定がない。鹿と狼のような明らかに敵対関係にあるキャラクターが一緒にプレイヤーを攻撃してくるのには違和感がある。
ドロップ率が低い
属性武器やルーンによるカスタマイズなどの要素があるが、武器を吟味できるほどドロップしない。また、店売りの価格も高い。
一応、武具に入った状態で出てくるルーンを回収(取り外すときに武具本体は壊れてしまうが)していけばそれなりの数にはなる。
英語が多い
一部のキャラクターには日本語のボイスがあるが、画面の表示は全て英語だ。アクションRPGだけあって文章量は多めなので、細かいところまで把握しようと思うとそれなりの英語力を要求される。
幸いイラストが多いので大筋は分かるし、目的地も表示されるので迷うことはないだろう。
長い目で見よう
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Steamのレビューではおすすめとしているユーザが多いThe Vagrantだが、現時点でゲームとして人に勧めるかと聞かれれば答えは限りなくNOに近い。素材は良いのだが、バランスが劣悪すぎてプレイしていて楽しいものになっていないからだ。敵の攻撃パターンや武器の強化システムなど、色々な要素を入れすぎてバランスが調整できていないように感じる。
インディーゲームでありがちなのは、特定のキャラクターやアビリティが強すぎてバランスが崩壊しているものだ。その場合は自主的に封印してこそこ遊べたりもするが、The Vagrantではどの攻撃も弱い。
玉子を食べよう
クリアだけを考えるなら、どこの店でも売っている玉子を大量に購入して食べながら戦うと良い。ポーション類と違って食材系のアイテムはポーズ画面からしか使えないが、戦闘中でもポーズさえすれば問題なく使用可能だ。
ポーションのようなクールダウンも存在せず価格も安いので、ポーションの役割を完全に奪ってしまっている。戦闘中にポーズするのは面倒でテンポも悪くなるが、それだけである。
ヴァニラウェアファンにはおすすめかも?
影響を受けているとされるヴァニラウェアのゲームを知らないので、補正無しの評価だ。そちらのファンならば評価は変わってきそうだが…現時点ではあまりおすすめできない。ゲームをするためではなく、早期アクセス作品を応援する気持ちで購入するのが良いだろう。
価格が安いので実装分のクリアまで8~9時間も遊べれば十分と考えることもできるが、まともに楽しめたのは4時間ほどである。同じ敵を倒してマナ集めをしたくなければ、正式リリースを待って購入を検討するのがおすすめだ。
作品の雰囲気からすると将来的には日本語対応も行われそうなので、そちらを期待することもできるかもしれない。
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