
アナログゲームを遊ぶ人間なら誰でも一度は感じたことがあるであろう、人を集める難しさ。アナログゲーム好きの友人や親戚が身近にいるか自分からボードゲームカフェのようなスペースに足を運ばないと、大人数で集まってアナログゲームを遊べる機会は多くない。
Steamで販売されている『Tabletop Simulator』は、いつでもオンラインでアナログゲームを遊べるツールだ。ボードゲームはもちろん、TRPGや人狼ゲームのツールとしても使用できる。
アナログゲームをデジタルで遊ぶ
シミュレーションするだけのツール
Tabletop Simulatorは、部屋やテーブルを用意してくれるシミュレーターでしかない。あらかじめ用意された各種カードやダイス・トークン類で遊べるゲーム(トランプやチェス)も何本か入っているが、それらはおまけのようなものである。こうしたゲームを遊ぶだけであれば、各種便利機能が付属する専用のソフトを選ぶべきだ。
TTS(Tabletop Simulator)には対戦相手のAIも付属していないし、誤った手が打てないようにする補助機能などもない。現実のチェスと同様に、駒同士をぶつけて盤面を崩してしまうことすら起こりうるのだ。
自由なシミュレーション
だが、この自由さこそがTTSの強みとなっている。ルールがシステム化されていないので各種ローカルールを使った大富豪も簡単にできるし、将棋とチェスの盤を並べて同時に対戦も可能だ。それどころか、自作ModによってTTSで遊べるゲームを追加したり、Steamワークショップからダウンロードしたりすればいくらでも遊び続けられる。
巨大なボードと大量のカード類を使うゲームも、お絵かきゲームも、想像力重視のRPGも遊べる。Modとしてオブジェクトを追加すれば、テーブルの上で動く駒を使ったRPGだって作れてしまう。
リアルより便利なところ
リアルでアナログゲームを遊ぼうと思うと「紙とペンがほしい」「点数を記録できるカウンターがほしい」「ダイスを忘れた」などといったことが頻繁に起きる。TTSなら、こうしたアイテムをその場に「召喚」可能だ。6面やら20面やら、好きなだけ呼び出してジャラジャラできる。
また、カードのシャッフルもボタン1つで簡単にできる。シャッフル中に取り落としたり、カードを傷つけたりといった心配もないので不器用なプレイヤー(にたすちゃん)も安心だ。
魔法のようなオブジェクト
3Dモデリングやスクリプトによる管理ができるならば、動く駒を作ることも可能だ。現実に作るのは難しい火を吹くドラゴンなども作れるので、セッションを盛り上げるために使える。
AR的なマーカー
対面でのゲームと違って直接相手の姿が見えないのは欠点だが、空中に設置できる矢印やオブジェクトに直接書き込めるペンを使ってルールを説明すると伝えやすい。駒の色をその場で変更するようなこともできてしまうのはデジタルならではだ。
Tabletop Simulatorをどう使うか

使い方次第ではとても面白いツールとなるTabletop Simulatorだが、不便なところもある。購入する前に、自分の目的に合うかをよく検討すれば後悔することは減らせるはずだ。
オンラインでマルチプレイ

直接集まる必要があるアナログゲーム会と違い、TTSならば離れたところにいる相手ともすぐにマルチプレイができる。日本全国どころか、外国語でコミュニケーションできるなら世界中のプレイヤーと一緒に遊べるのだ。グローバルチャットで使われている言語はほぼ英語なので、英語が堪能ならば「アナログゲームの野良マルチ」すら可能だろう。
人がいない
TTSは同時接続数が3,000を超えることもある人気作品だ。だが、グローバルチャットでプレイヤーの募集をしているような卓は多くない。多くの部屋は非公開(入室にパスワードが必要)やフレンド限定に設定されている。
そのため、Steamのフレンドと一緒にTTSを購入するというのでなければ外部(SteamグループやDiscordなど)でTTSを遊ぶ人たちを探すべきだろう。
バグはある
ときには「同じ部屋にいるのに特定の人が見えない」といった不具合が起きることもある。多くの場合タイトルに戻っての再接続やTTSの再起動で復旧できるので、あまり気にする必要はないだろう。これはデジタルならではの良くないところだ。
不便さはそのまま
アナログゲームをデジタル化したゲームと違ってゲームの進行を補助する機能などはないため、「誰の手番かわからなくなる」「ルール上禁止されている行為を知らずにやってしまう」といったことが起きる可能性もある。リアルに比べて視野が狭くなりがちなので、慣れていないゲームでは誰もミスに気づかないまま進めてしまうことも十分あり得る。
ソロで重ゲーを回す
ボードゲーム エルドリッチホラーこのブログで過去に紹介したことがあるエルドリッチホラーのような重量級のゲームをリアルで遊ぶとなると、準備と片付けだけでも時間がかかってしまう。想像するだけで疲れてしまうこの手間を、TTSは削減してくれる。
準備・片付けが一瞬に
導入したゲーム次第ではあるが、多くのゲームは読み込んだ時点でセットアップがある程度行われている。あとはカードのシャッフルをしてゲームを始めるだけ、というタイトルも多い。
ゲーム終了後も、カード・トークンを丁寧に仕分けて箱にしまう必要がない。テーブルをひっくり返して次のゲームを始めても良いし、そのままTTSを終了させても良いのだ。
好きなところでセーブして後日続きを遊ぶこともできるため、プレイ時間が非常に長いゲームでも始めやすい。
扱いにくい
シャッフルが一瞬、枚数指定でカードを引く処理が簡単といった点はデジタル化のメリットだ。だが一方で、アナログの方がやりやすいこともある。マウス・パッド操作でトークンを狙った場所に置くのが難しかったり、画面が小さいとテーブル全体を見渡しにくかったりする。
DLCとMOD

DLC
TTS本体だけで遊べるゲームは少なく、この作品の中心となっているのはDLCやModで追加するゲームだ。DLCは2018年2月26日時点で34種類が販売されており、リアルで日本語版が販売されているような人気作も数百円で購入できる。版元にどの程度お金が入るのかは不明だが、ライセンスを得て販売されているものなので購入することでデザイナーやパブリッシャーを応援することにもなるはずだ。
ただ、基本的に英語で遊ぶことになる。英語が読めないプレイヤーにとっては厄介な点だ(訳文があればゲーム内で日本語テキストを書いたラベルを貼ることもできる)
MOD
TTSにゲームを追加するもう一つの方法はSteamワークショップなどで公開されているModを利用するものだ。こちらは英語以外に日本語、韓国語、中国語などで公開されているゲームもあり、英語圏以外のプレイヤーでも遊びやすいだろう。
法整備されていない領域なので、こうしたModを利用するなら出来る限りリアルでその作品を購入するようにしたいところではある。そうしないとゲームを作ってくれた人たちにお金が入らず、次の作品を生み出すことに繋がらない。リアルでゲームを所有すればデジタルな複製を作って良いのか?というのは難しいところだが…購入して応援するのが精一杯だ。
ぼっちプレイにはいまいち
個人的意見だが、重ゲーのソロプレイツールとしてTTSを買うことはおすすめしない。TTSで遊べるからといってエルドリッチホラーのアナログ版を手放そうとは思えないのだ。確かにセットアップは便利なのだが、何かと面倒で…アナログの方が素早くできることも多いのである。
オンラインマルチツールとして購入するなら、文句なしのおすすめだ。そのついでにソロゲームも軽く触ってみるくらいのつもりでいるのが良いだろう。
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