価格破壊著しい横スクロールARPG『The Vagrant』

 

『The Vagrant』は低価格の遊べるゲームが多数販売されているSteamでも飛び抜けてコストパフォーマンスに優れた作品の一つで、セール時にはなんとワンコイン以下になることもあるほど。
ちょうどこの記事を書いている今もセール中で、82円。
100円でお釣りが来るので、駄菓子感覚で気軽に手を出せてしまいます。

この作品についてはアーリーアクセス段階でそのときに存在する範囲をクリアして記事を書いています。
The Vagrantの記事
2018年1月の公開になっているので、実に4年半も経っています。
公開から時間が経っているにもかかわらず現在も閲覧数が多い記事となっているのは、ゲーム自体の注目度と日本語情報の少なさゆえでしょう。

ゲームバランスには当時から大いに不満を持っていたものの、価格に対しての充実度合いは特筆すべきものがあり、最終的にどうなったのか気になる作品でした。
まだ日本語もなく、エンディングもなく、ボスも現在より少なかったんですよね。

数年ぶりにインストールしたところ、Steamクラウドのおかげで当時のセーブデータが保存されていました。
しかしアビリティの取得に必要なマナやドロップアイテムの量などバランス面での追加調整が必要という印象が強かったため、過去のセーブデータは使わず新規に開始してクリアまでプレイしてみました。

どこが変わってどこが変わらなかったのか、4年半ぶりのThe Vagrantです。

さらに高まったコストパフォーマンス

意識的に実績を埋めるようなプレイはしていないので残っているものも多いとはいえ、ひとまずエンディングを見た時点でプレイ時間は約7時間。
実績の取得率は50%にとどいておらず、価格に対するコンテンツ量は以前よりも大きくなっていると言えそうです。

それもそのはず、お値段据え置き(セール時の割引率はむしろ上がっている)でコンテンツは増えているんですよね。
ストーリーの完結やボスの追加はもちろん、日本語でプレイできるようになったのも日本のプレイヤーにとっては嬉しいポイントです。

おすすめポイント

最終盤以外は楽しめる

以前は中盤から終盤にかけて敵の体力や攻撃力がインフレしていき、ポーズ画面を開いては店売りの食品を食べて回復しつつゴリ押しで実装された範囲をクリアしました。
しかし現在はもろもろ調整が入ったようでバランスが改善しているように感じました。

ただし、最終ボス近辺の敵のみやはり食品頼みの戦いに。
ポーションは連続使用すると回復量が不足しがちなので、クールダウンなしで使える食品の優位は変わりませんでした。

相変わらずよくできたマップ

足場から落とされた先にトラップがあったり、高所の砲台が狙撃してきたりと悪意を感じるマップデザイン。終盤ではますます嫌がらせ感が強まっています。
これだけだと良くない点なのですが、わざわざ不要な敵を倒した先や行き止まりにはきちんと宝箱があるので探索のしがいがあるのも事実です。

ゲーム内で見られるマップも行っていない場所に気づきやすく、考えて作られているのは褒めるべき点ではないかと。

実用性はともかく多彩な攻撃技

攻略上はコンボのパターン開放より攻撃力アップやバフにマナを投じて通常攻撃を連打した方が強いバランスですが、移動や周回プレイには便利な技が複数あります。
また、一部のスキルはRageを無制限化するポーションとの併用前提でバランスブレイカーとなります。
食品連打による回復と合わせて、詰み防止の救済策と言えるかもしれません。

3属性の武器とルーンによる強化

火、氷、雷の属性武器はアーリーアクセスから続投。
いずれも状況次第で有効ですが、DPSが読みにくく武器を選びにくいのが難点といえば難点でしょう。

ルーンによる強化システムも過去と同じのようです。
装備のドロップが増えたのでその廃棄でルーンが手に入る機会も増え、気に入った装備に好きな効果を付けて使えます。
が、1周目だと特に武器を次々乗り換えるので強いルーンを使いにくく、役に立つかは微妙ですね…。

稼ぎなしでもクリアは一応可能

道中の宝箱から手に入る武器・防具が比較的優秀なので、陳腐化しがちな装備や使わないコンボの開放にマナを注ぎ込まなければ進めやすくなっています。
RPGの要素が強くて同じ敵を倒し続ける作業が必要なゲームは苦手、という方にもおすすめしやすくなっています。

マナの使い道としては、まず2段ジャンプや回避強化など必須といえるアクションの開放ですね。
後は常時有効な能力アップと発動機会の多いバフにつぎ込むのが有効でしょう。
素直に攻撃力と防御力を伸ばし、攻撃強化のバフをもりもり付けて通常攻撃で敵を殴るゲームです。
偏ったアビリティの開放をしてしまったとしても、手段を選ばなければおそらくクリアはできます。

装備ドロップが多い

基礎性能としては宝箱から手に入る装備が優秀な傾向にあるものの、敵からドロップする装備にはステータスアップや特殊効果のあるルーンが付いていることがよくあります。
以前はドロップする装備が少なくせっかくのルーンシステムの使い所が不足している印象でしたが、今回はルーンを手に入れる機会が増えたように感じました。
店売りの装備は高すぎて手が出しにくいので、装備を選べる余地が増えたという意味でも好印象です。

ただ、基本的にはストーリーが進むに連れてより強い装備が手に入るようになるので乗り換えが頻繁に必要です。
一度付与してしまったルーンは自由に外せないため、レアなルーンの使い所は要検討かもしれません。

おすすめできないポイント

コンボ・スキル不遇

以前と変わらず1対1の状況が少なく、遠距離攻撃の横槍でコンボは潰されます。
1対1で戦うようなボスは基本ひるまないのでやっぱりコンボを潰されがちです。
ただ、ゲーム内で明記されていないものの武器によって振りの速さがかなり違うので、振りの早い武器を積極的に使うスタイルなら活用できるのかもしれません。

スキルは威力が大きかったり貴重な飛び道具だったりするもののRageを消費してしまうため、Rage関係のポーションを併用しないとあまり連発できません。
Rage無限のポーションを飲みつつスキル連打で速攻するのでなければ、Rage最大時攻撃アップのアビリティを有効化して通常攻撃し続けた方がおそらくダメージ効率が上です。
スキルを強化する系のアビリティは全スキルではなく特定のスキルを強化するものばかりなので、敵に合わせて使い分けようと思うと大量のマナをつぎ込む必要があるのもマイナスポイント。

たまにお手玉される

以前はもっと頻繁に発生した印象ですが、改善されたのかもしれません。
雑魚を召喚するボス戦や最終盤の道中で発生はするものの、操作を受け付けず一方的に殴られるような状態は少なくなりました。

ただし氷や雷といった属性を持つ中盤~後半の雑魚によるふっ飛ばしが鬱陶しいのは相変わらず。
ある程度のHPアップやダメージカットを積んでおかないと、凍結中に攻撃されてそのままゲームオーバーもありえます。

敵もろもろ

強かったり倒すのが面倒だったりする敵も、報酬がしょっぱいバランス。
逆に通常攻撃連打で完封できるような敵も、普通にそれなりの報酬をくれます。
厄介な敵はそれに見合ったものを落としてほしいところです。特に飛んでいる敵。

ドロップなしorほぼなしで次々と無限湧きする雑魚も存在しており、殲滅するプレイスタイルのメリットが薄くなっています。
それなら稼ぎやすいポイントで稼いで、嫌な敵がいるところは突っ切る…と思ったら壁が出てきて強制戦闘させられる展開もよくあります。

空中に浮かぶ敵には上方向に有効な攻撃技が少なく対応しにくいですが、以前に比べると画面の最上部まで逃げることが少なくなったかもしれません。
滞空する敵は体力が控えめなこともあり、ジャンプまたは2段ジャンプで届く範囲にいてくれるなら許容範囲かなと。

要求マナが多いので取得は2周め以降になると思いますが、空中攻撃全般の威力を上げるアビリティも用意されてはいます。
当たり判定が高いところにあるボスも多く、空中攻撃が必要な場面は珍しくありません。
普通に1周しただけでは取得できませんでしたが、取りに行くのも良さそうですね。

トラップが邪魔

ステータスや装備を引き継いでの周回プレイも可能になりサクサク敵を倒せるかと思いきや、毒樽が紛れていて敵を誘導する必要があったりつららが落ちてきて氷漬けになったり。
工夫して利用するような要素がなく、回避の無敵で体当たりして壊すとか、力技で殴って壊すとかの単調な作業が増えるだけとなっています。

プレイヤー側にだけ悪影響を与える地形効果は個人的に非常に嫌いな要素です。
なぜ狼やイノシシが毒状態にならず、ゾンビが火炎トラップ無効なのか。
回避するAIや判定の実装が面倒だから…?

飛ばせないイベント

ボスに倒されての再挑戦や2周め以降でも、会話イベントはスキップできません。
最近のゲームでは珍しくない機能なので、周回できるなら入れてほしかったですね。

説明不足傾向

武器の振り速度や各種スキルのダメージ倍率など使ってみるまで分からない要素が多くあります。
マスクデータだらけのゲームというわけではありませんが、複数の武器を取捨選択するときにどちらが強いか分からないのはちょっと引っかかります。

おすすめか?

アーリーでも評価の高かった作品が完成しておすすめに!と言いたかったのですが、はっきり言っておすすめはしません。面白くないので。
強敵を倒す達成感や良いアイテムを拾う快感があまりなく、攻撃力が低くて敵を倒すのに時間のかかる1周目はストレスの方が大きくなると思います。

ただし非常に価格が安いという特徴があります。
開発コストを回収できていないのではと心配になるレベルに。
時間さえあるなら金銭的な損にはなりにくく、合わなければすぐやめるつもりで手を出してみるのは悪くありません。

アクション部分はストレスフルですが、マルチエンディングなのでトゥルーエンドまでは見たいと思っています。
ストーリーと無関係のやりこみ要素だと思って無視したルートの先に行かないと見られないようなので、1周目で無視してきたアビリティの開放や装備の強化を終えた上で食品を買い込んで挑戦します。
もっと敵が柔らかいイージーモードがあると楽なのですが、ノーマルが最低なんですよね。

まだ最後までやろうという意思があるなら嫌いではないことになるのかも。
なんとも評価しにくい作品です。

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