『The Vagrant』の記事を書きながらどうしても拭えなかった疑問があります。
価格から想像できるものをはるかに超えた開発の熱量は好ましく思いながら、なぜThe Vagrantをおすすめするとは言えないのか。
もちろん記事内で指摘したような作品の粗が多数あることは事実ですが、一番大きいのはゲームに対する向き合い方と用意されたジャンル間のバランスが合わなかったことかもしれません。
具体的にはRPGのような育成要素がある作品における難易度の選択と、アクションゲームでの消耗品使用に対する考え方の問題ですね。
難易度変更システム
難易度選択
2段階や3段階、あるいはそれ以上の選択肢からゲームの難易度を選ばせてくれるシステムです。
ゲーム開始時に選べるだけでなく、任意のタイミングで変更できたりゲームオーバー時に難易度を下げられたりといったパターンもありますね。
変更される要素はジャンルによっても様々ですが、展開は共通のままステータスの数値やアイテムドロップ率を調整したり、強力な攻撃が追加・削除されたりといったものが多いでしょうか。
リズムゲームなんかはそもそも全く別の譜面になったりもしますね。
アクションゲームでマップが丸々カットされるといった例もあります。
ストーリーやキャラクター目当てで苦手ジャンルに挑戦するときやゲーム時間を避けない時期も、イージーやカジュアルといった難易度が用意されていれば遊びやすくなります。
逆に低難易度だと退屈なので高難易度の絶望感を楽しむとか、気に入った作品は難易度を上げて2周めに入るというスタイルもありですね。
自動的な難易度調整
プレイヤーが能動的に難易度を選ぶ方式の他に、ゲーム側が自動的に調整する方式もあります。
順調にゲームを進めていると敵の数や攻撃力が増し、HPが少なかったりコンティニューを繰り返すと敵が減ったり攻撃の頻度が下がったりするという形です。
先に進めず詰まってしまうプレイヤーの救済策として有効な反面、調整の幅やトリガーによっては「ここでわざと死ぬと次のボスが速く倒せる」のような不思議な攻略法が生まれたりもしますが…。
主人公のレベルに応じて敵のレベルも上がるような作品もありますね。
ひたすら育成を進めて一方的に蹂躙するようなプレイスタイルを受け入れない代わりに、どのように進めても開発者が意図したバランスが保たれるのはメリットかもしれません。
難易度選択・調整の制約とメリット
いずれにせよ、画一的な難易度をプレイヤーに押し付けるのではなく、幅広い層のプレイヤーが自分に合った歯ごたえでゲームを楽しめるようにしてくれるものといえます。
難易度は一つでクリアできなければ諦めろという作りも悪くはありませんが、唯一の難易度が難しすぎたり簡単すぎたりするとそもそもプレイヤーが増えにくいという問題が出てきますね。
シューティングゲームなど比較的一回のプレイが短い作品では最高難易度でしかベストエンディングが見られない設計のものもありますが、一般的とはいえません。
高難易度クリアは純粋な自己満足または実績解除やおまけ要素目当てという扱いの方が主流ではないでしょうか。
開発側が用意している以上プレイスタイルはもちろん個人の自由なのですが、「自分はやらない遊び方」はあります。
RPGにおける難易度
RPGや育成要素の大きいARPGでも難易度を変更できるものがありますが、個人的には最低難易度がベストだと考えています。
こうしたジャンルは主人公の強化度合いでプレイヤー自身が難易度を調整できる面があります。
敵が強くて厳しくてもさらに戦闘を繰り返してレベルを上げれば、あるいはお金を稼いで装備を整えれば勝てるわけですね。
難易度を上げれば楽しくなるわけでもなく、稼ぎ目的の戦闘が増えて時間がかかるだけならあえて選ぶ必要はないという認識ですね。
レベル上げ作業がしたくてRPGをやっているというわけではなくストーリーの終わりを見届けたくて急いで進めていることが多いので、それが大きいでしょうか。
せめて最低難易度では、敵の体力が高いと感じることなく次々と倒してエンディングまで行きたいですね。
アクションゲームの消耗品
リスクを取って使う消耗品
純粋なアクションゲームでは敵に当たれば即ミスになるものやステージ中に設置されたアイテムでしか回復できないものも珍しくありません。
ARPGやアイテムマネジメントの要素があるゲームでは所持アイテムや魔法を使って回復できるシステムが多いですね。
とはいえ頻繁に回復したくなるのはボスとの戦闘中でしょう。
攻撃を受けて吹っ飛んでいる途中では普通回復できませんし、そうでなくとも相手が隙を見せるのを待って、あるいは上手く距離を取って回復しなければなりません。
無理やり回復した直後にダメージを受けてピンチが続くか、回復自体を止められてそのままゲームオーバーということもありえます。
こちらの方式を取るゲームの場合、戦闘に持ち込めるアイテムの数自体もそこまで多くないことが多いです。
回復アイテムなしより用意した方が楽になるのは間違いないものの、アイテムだけで全てを覆すことはできないイメージです。
ゲームテンポを損なわず自然でもあり、リスクとリターンを天秤にかけて判断する要素もあります。
回復後にポーズを取って長時間硬直するとか、回復に反応して謎ムーブでいきなり潰しに来るとかはちょっと違和感が大きいですが。
あとは起き攻めでなすすべなくやられるパターンもありがちですね…。
ポーズメニューから使う消耗品
他の方式として、戦闘を一時停止するポーズメニューからアイテムを選んで使えるというものもあります。
プレイヤー側からすると落ち着いてアイテムを選べます。
念のため少し回復するつもりで貴重な全回復アイテムを使ってしまったり、回復どころか爆弾を投げて自爆してしまったりといった意図しない操作を避けられます。
ただ、いつでも使えるとなるとアイテムゴリ押しゲーになりがちです。
一撃耐えられる装備やHPがあれば、あとは回復アイテムが尽きるかポーズボタンを押し損ねるまで倒されません。
持てるアイテムが少ないゲームならともかく、×99とかになると攻撃を避ける必要がないかも。
回復のために繰り返し戦闘を止めることになるので手間に感じるだけでなく、戦闘の準備として消耗品を集める作業が入ってしまうのも個人的には大きなマイナスポイントです。
The Vagrantでは倒すことを強いられる敵が多く意識して稼がなくても大量に食品が集まりますが、1個あたりの回復量が少なく1撃食らうごとに回復連打が必要なので悪い印象が強いのもあります。
使わない
消耗品を用意しなくてもクリアできるバランスが一番好みだったりします。
時間限定の強化アイテムを多数使う前提でも倒すのに時間がかかるようなボスではなく、きちんとアクションすればアイテムなしでも短時間で倒せるのが理想。
昔のモンハンはアイテム採取で回復薬を用意するのが面倒だったので、支給分だけで倒せるように頑張っていました。
RPGよりアクションを
結局、この要素が大きいです。
1本のゲームを長くプレイするのがあまり好きではないので、各種育成要素のあるゲームとの相性は最悪。
コマンド選択式のRPGに比べればARPGは好きですが、それは「道中の敵を処理するだけで快適に進められる経験値が得られ、頻繁に消耗品を使わなくても通常攻撃ゴリ押しでクリアできるバランスなら待たされ感が少ないから」なんですよね。
The Vagrantに対して曖昧な感情を持ってしまうのは、アクション要素を求めていたのにRPG要素が強かったからという面がありそうです。
アクション部分で上手く捌いて攻撃のチャンスを作ったとしても敵が怯んだりはせず、数十回も繰り返さないと終わらないので苦行感が強くなります。
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